【映画レビュー】藁にもすがる獣たち／ 지푸라기라도 잡고 싶은 짐승들

2021/2/14 外国映画わ行, 映画レビュー

チョン・ドヨンにチョン・ウソン、ペ・ソンウにチョン・マンシクという、韓国映画界を代表するスター俳優・クセモノ俳優が顔を揃えた映画『藁にもすがる獣たち』。

大金を得た者、大金を奪おうとする者、大金を得ることを望む者、それぞれの欲と得が絡み合い、とんでもないドラマが繰り広げられていきます。

それにしても、人間って定められた運命は変えられないものなんですかね。
ラッキーなんて二度は続かないということか。。。

＜STORY＞
事業に失敗して銭湯でアルバイトする中年男・ジュンマンは、ロッカーで客が残したバッグを発見する。そのバッグには、大金の入っていた……。港で出入国管理官の仕事をしているテヨンは、かつての恋人・ヨンヒの借金の保証人になったことから、借金取りに追われている。金を稼ぐために密入国の手引きをしようとするが、ソウルからやってきた刑事に目をつけられてしまう。ある日、テヨンが家に帰ると、行方不明だったヨンヒが待っており……。

＜解説＞
曽根圭介の小説「藁にもすがる獣たち」を、韓国を舞台に映画化した本作。

国際フェリーも行き来する韓国の港町を舞台に、欲と得が入り混じった攻防戦が繰り広げられていきます。

ひどい男、考えの足りない男を利用する弱い女。
弱い女を食い物にする強い女。
強い女に振り回される馬鹿な男たち。

一生懸命生きてもうまくいかないアンラッキーな男。
息子の嫁を嫌う姑。
姑に憎まれ嫌われて生活に疲れても、ひたすら日々を生きる女……。

社会的弱者でもある獣たちは、自分のもてる能力を利用して、なんとか生き抜こうと知恵を絞ります。
とはいえ、脇が甘かったり、自分以上に知恵の回る奴がいたり、自分以上に運がいい人がいたり、異常に運が悪かったりで、どんどん自滅していったりしてしまうわけですが。

ラッキーストライクは人生に二度は訪れない。そして、人生で一番強いのは、自分を失わずにやるべきことを黙々と続けている人なのかもしれない……。
などと、貴重な人生訓を教えてくれたりもしています。

チョン・ドヨンの残虐非道な悪女っぷり、チョン・ウソンのどうしようもない行き当たりばったりぶりも楽しい、ダメ人間たちのクライムムービー。
見方によっては本当に悲惨な物語なのですが、どこかおかしみを感じさせるテンポの良い演出も素晴らしい。
脚本も務めた新人監督のキム・ヨンフン、本作が長編デビューとは思えない、手練れっぷりを見せてくれました。

『藁にもすがる獣たち』（109分／韓国／2020年）
原題：지푸라기라도 잡고 싶은 짐승들
英題：Beasts Clawing at Straws
公開：2020年2月19日
配給：クロックワークス
劇場：シネマート新宿ほか全国にて
原作：曽根圭介「藁にもすがる獣たち」（講談社文庫）
監督・脚本：キム・ヨンフン
製作：チャン･ウォンソク
撮影：キム・テソン
編集：ハン・ミヨン
音楽：カン・ネネ
出演：チョン・ドヨン／チョン・ウソン／ペ・ソンウ／チョン・マンシク／チン・ギョン／シン・ヒョンビン／チョン・ガラム／ユン・ヨジョン
Official Website：http://klockworx-asia.com/warasuga/