【映画レビュー】クイーンズ・オブ・フィールド / Une belle équipe
フランスの田舎町を舞台に、サッカーチームを守るために街の女性たちが立ち上がる姿を描いた映画『クイーンズ・オブ・フィールド』。
「サッカーは男のもの!」という前時代的な男たちの観念を、自力で突破していく女性たちの姿はやっぱり痛快。
物事はそう簡単にはいかないし、サッカーだってそう簡単には強くはなれないけれど、自分たちが立ち上がれば、少しずつでも世界は変化していくのです。
そこに今限界があったとしても、そのムーブメントは世界に広がり、後に続く人が現れるはずだから。
偏見に満ちた政治家の失言が世を騒がしている今の日本で、今この映画が公開されることにこそ、意味があるように思います。
スポーツを愛する森喜朗さんに、ぜひ観て欲しい映画です。
<STORY>
SPACは北フランス・クルリエールで90年の伝統を誇る地元サッカーチーム。しかし、試合中に乱闘騒ぎを起こし、レフリーを侮辱したことから、選手全員が試合出場停止の処罰を受けることに。このままでは残りのリーグ戦に参加できず、チームは崩壊してしまう……。そこで監督のマルコは一計を案じ、街の女性たちを試合に参加させることに。主婦や女子高生、サッカー経験がほとんどない女性が集まり、街のチームのために立ち上がるのだが……。
<解説>
町のみんなから長年親しまれてきたサッカーチームの危機を救うため、女性たちが立ち上がる姿を描いた映画『クイーンズ・オブ・フィールド』。
選手全員がリーグ戦の出場停止処分を受けた伝統のサッカーチームSPAC監督のマルコは、なんとかチームを救うために街の女性たちを集めて試合に出ようとします。
選手たちの奥さんに声をかけますが、当の男性選手たちは大反対。
「サッカーは男のものだ」
「うちの妻にサッカーなんてさせられるか」
しかし、男性たちの反対を押し切って、女性たちはノリノリで練習に参加してくれるように。
これまでサッカーは“見るもの”として楽しんできた女性たちですが、“プレイする”という楽しみを知るのです。
これまでは主婦として子育てや家事に追われていた女性たちは、練習に汗を流し、練習のない日には女性同士でワインを飲みながらガールズトークを繰り広げ、これまで男たちが味わってきた解放感を知るのです。
固定観念に凝り固まった男たちは、これが気に入らず、あれこれ妨害工作をするように。彼女たちはSPACを救うために立ち上がったというのに。
監督のマルコは、そんな男性たちと女性たちの板挟みで、色々と苦労をします。
しかし、女性選手たちの頑張りをもっとも近くで見ている彼だからこそ、「サッカーは男のするものだ」と思っていた自身の価値観をアップデートし、他の男性たちの心を変えるため、家族ぐるみで奮闘するのです。
そのマルコの努力、そして女子選手たちの努力は、街の人々の心をだんだんと変えていくのですが……。
努力したって、すぐに成果は手に入るものではありません。
でも、その努力の痕跡は、必ず世界を変えていく……。
頭の固い組織の人々の心も、きっといつか変わると信じさせてくれるような、女性たちをエンパワーメントしてくれる、そんな映画でした。
女子選手の役で女子サッカーのフランス代表のコリン・フランコも出演しているので、ガチのサッカーファンにとっても見どころが多いのではないでしょうか。
『クイーンズ・オブ・フィールド』(95分/フランス/2019年)
原題:Une belle équipe
英題:Queens of the Field
公開:2021年3月19日
配給:イオンエンターテイメント
劇場:イオンシネマほか全国にて
監督・脚本:モハメド・ハムディ
製作:ニコラ・デュバル・アダソフスキ/ジャメル・ドゥブーズ
脚本:アラン=ミシェル・ブラン
音楽:イブラヒム・マアルーフ
出演:カド・メラッド/アルバン・イヴァノフ/セリーヌ・サレット/サブリナ・ウアザニ/ロール・カラミー/コリン・フランコ/ギヨーム・グイ
Official Website:https://qof-movie.com/
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