【映画レビュー】望み

親とは、子どもの安全を望むもの。
そんな親が、子の“死”を望むことはあるのでしょうか。あるとしたらどんな時なのでしょうか……。

映画『望み』では、そんな重いテーマが描かれています。

物語の中心となるのは、堤真一石田ゆり子の二人の実力派俳優。この二人が、行方不明になった我が子の真実に翻弄され、苦しむ親の姿を演じています。

親の心子知らず、子の心親知らず。
親子だからこそ、言わないこと、言えないことがある。

雫井脩介同名小説を、堤幸彦がすれちがう家族の葛藤のドラマとして映像化した一作です。

<STORY>
建築士の石川一登は、郊外の一軒家で妻と二人の子どもと、自らが設計した家で幸せな日々を送っていた。1月のある日、高一の息子・規士が帰ってこない。近所で高校生が殺され、犯人と思われる二人の若者が逃走しているというニュースが流れ、一家に緊張が走る。必死で情報を探るうち、3人の事件関係者が行方不明になっており、2人は犯人、そしてもう1人は被害者だと言われていることを知る。息子は犯人なのか、それとももう1人の被害者なのか…。

<解説>
思春期の子どもが反抗期で親と口をきかなくなるというのは、よくあること。
子どもにとっては、親に心配をかけるのも嫌だし、親から心配されるのも嫌だし、友人同士のトラブルがあったとしても、それを親は言わずに自分で解決しようとします。
しかし、その態度は親にとっては反抗的で見え、何を考えているのかわからなくなったりもします。
それでついお説教をしてしまい、そのせいでさらに子どもから避けられてしまうことも……。

この映画『望み』では、そんな状態ですれ違ったまま行方不明になってしまった息子をめぐり、家族が葛藤する様が描かれています。

怪我を負わされたことをきっかけに、大好きだったサッカーができなくなった高校一年生の息子・規士は、サッカー部を引退した頃から、夜に出かけるようになり、両親に反抗的な態度をとるようになります。
そして、これまでは持っていなかった刃物(といっても切り出しの小刀)を所持しているのを見つけ、両親は「息子は何をしているのか」と心配するようになるのです。

そして、新年の三が日も過ぎた頃、息子は帰ってこなくなり、息子の友人が殺されてしまうのです。
やがて、自分の息子が犯罪者として逃亡しているか、もしくはもう一人の被害者として殺害されているか、どちらかだということを知ります。

刑事が家にやってきたり、マスコミが家を取り囲んでいたり、仕事もうまくいかなくなったり、家族にとっては辛い日々が続きます。
息子は殺人を犯した少年犯罪の加害者なのか。それとも少年犯罪の被害者なのか……。

そんな中でも、石田ゆり子演じる母親は「息子に生きていてほしい」と望み、息子の生存を信じます。
堤真一演じる父親は、「あいつは犯人じゃない」と、息子の正義を望み、息子の無実を信じます。
清原果耶演じる妹は、自分たちが加害者家族にならないことを望みます。中学三年生、受験生の彼女には、これから先も長い人生が待ち受けているのです。

そして、家族三人が、それぞれに辛い“望み”と葛藤を抱える中、息子が発見されるのですが……。

物語の前半では、岡田健史演じる規士は、何を考えているかわからない、ぶっきらぼうな少年として描かれています。
写真の中では輝いているけれど、生きて動く彼は、常に仏頂面です。

やがて、物語の後半に、家族は規士の思いを知ることになります。
規士を待ち続け、辛い日々を過ごした後、やっと規士の笑顔を思い出すことができるようになるのです。

親の愛はなかなか子には伝わらず、子の思いや子の成長は親にはわからないものなのですね……。

『望み』(108分/日本/2020年)
公開:2020年10月9日
配給:KADOKAWA
劇場:全国にて
原作:雫井脩介
監督:堤幸彦
脚本:奥寺佐渡子
音楽:山内達哉
主題歌:森山直太朗「落日」
出演:堤真一石田ゆり子岡田健史清原果耶加藤雅也市毛良枝松田翔太竜雷太西尾まり三浦貴大渡辺哲平原テツ早織
Official Website:https://nozomi-movie.jp/

 

望み (角川文庫)
望み (角川文庫)

posted with AmaQuick at 2020.10.05
雫井 脩介(著)
KADOKAWA (2019-04-24T00:00:00.000Z)
3.8outof5stars
¥673
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レクタングル(大)
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