【映画レビュー】シャンハイ / Shanghai
太平洋戦争勃発前夜の上海を舞台に、アメリカ人スパイのジョン・キューザック、日本軍人の渡辺謙、上海の裏社会のドン、チョウ・ユンファと、その妻、コン・リー、そして謎の日本人女性、菊地凛子が交錯する映画、『シャンハイ』。
いやー、チョウ・ユンファ、やっぱりカッコいいわ。
ちょっとお太りになられて、貫禄が出た分、こういうシブい大人役がよく似合います。
ストイックな軍人役の渡辺謙も、やっぱり素敵です。
まあ、主役はジョン・キューザックなんですけど、どうしても役柄的にちょっと損しちゃってますよねぇ…。
STORY
英、米、日本などの各国が租界を置いていた1941年の上海。米国の諜報部員であるポール・ソームスは上海に赴任し、親友でもあった同僚のコナーが日本租界で殺されたことを知る。スミコという日本人女性がコナーの愛人で、スミコのもとを訪ねた時に殺されたのだ。コナーは上海三合会という組織のボス・ランティンを調査していたという。身分を偽ってランティンに接触したソームスは、妻のアンナや日本軍大佐のタナカとも知己を得る。
解説
この作品のプロデューサー、マイク・メダヴォイは1941年、上海生まれ。
彼は、自分の生まれた時代の、生まれた土地の物語を10年の月日をかけて完成させました。
当時の上海を忠実に再現した大規模なセットの中で、アメリカ、中国、香港、日本、ドイツなど、様々な国籍の俳優が出演し、スウェーデン出身のミカエル・ハフストロームが監督する…。
この混沌は、まさに“シャンハイ”にぴったりと言えるでしょう。
1941年の上海と言えば、1845年にイギリスに割譲させられて以降、アメリカ、フランス、日本などが租界を獲得し、中国の主権の及ばない、混沌とした地域でした。
そこでは、各国の諜報部員たちが謀略をめぐらせ、中国人たちが結成する半日レジスタンス組織と日本軍との戦いが日々繰り広げられています。
上海三合界のドン、アンソニー・ランティン(チョウ・ユンファ)は、日本の裏・表社会の両方に幅広い人脈を持ち、暴力行為やカジノ、阿片窟などで、巨万の富を築いています。
アンソニーの美しい妻・アンナ(コン・リー)は、そんな彼に従いながらも、実は裏の顔も持っています。
日本軍情報部で海軍、空軍を掌握するタナカ大佐(渡辺謙)はランティンと取引をし、汚い仕事の数々を彼に担当させていました。
そして、新しく上海に赴任した米国諜報部員のポール・ソームス(ジョン・キューザック)は、新聞記者に扮して彼らに接近し、様々な情報を引き出そうとするのです。
やがて、彼は対日レジスタンスの女リーダーと出会い、彼女と絆を深めて行くのですが…。
時代背景や人物関係がなかなかに複雑で、込み入っている本作。
当時の上海の状況を理解していないと、物語自体もなかなか理解が難しいかもしれません。
しかし、この映画は、実は“愛の物語”です。
描かれているのは、大きな時代の流れに翻弄されながらも、それぞれの男たちが貫こうとする愛の姿は、なかなか見応えがあります。
日本軍人・タナカが見せる“愛”、中国人マフィア・ランティンが見せる“愛”、アメリカ人スパイ・ソームスが見せる“愛”…。
表出の仕方が三者三様なのは、やはりお国柄なのでしょうか。
さて、この原稿の中にはあまり登場していないのですが、この映画には、物語の鍵を握るスミコという日本人女性が登場します。
スミコを演じているのは、菊地凛子。
あんまりセリフの無い役なのですが、あるシーンで、彼女の演技力を実感してしまいました。
体調が悪くふせっているシーンがあるのですが、そのシーンの演技で、彼女が鼻の穴をピクッと動かすのです。
その鼻の穴のピクッという演技が、なんとも素晴らしく…。
人間って、役に入り込めば、鼻の穴まで動かすことができるようになるのだなあと、変なところに感動してしまったのでした。。。
別コラム
作品情報
『シャンハイ』(105分/アメリカ=中国/2010年)
原題:Shanghai
公開:2011年8月20日
配給:ギャガ
劇場:丸の内ピカデリーほか全国にて
監督:ミカエル・ハフストローム
製作:マイク・メダヴォイ
出演:ジョン・キューザック/コン・リー/チョウ・ユンファ/菊地凛子/渡辺謙/ジェフリー・ディーン・モーガン/デヴィッド・モース/フランカ・ポテンテ/ヒュー・ボネヴィル/レース・ウォン/ベネディクト・ウォン
公式HP:http://shanghai.gaga.ne.jp/
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