【映画レビュー】美輪明宏ドキュメンタリー~黒蜥蜴を探して~ / Miwa : à la recherche du Lézard Noir
「この『黒蜥蜴』って1968年の映画に出ている美輪明宏って何者? とってもきれいだし、女の役で出てるけど、アキヒロって男性の名前だよね? なんなの?」
と、疑問に思ったフランス人監督のパスカル=アレックス・ヴァンサンが2010年に製作したドキュメンタリー映画『美輪明宏ドキュメンタリー~黒蜥蜴を探して~』。
日本で育った私は、幼い頃から男性名でありながら女性の洋服を着ている美輪明宏という存在を、なんとなく不思議にも思っていませんでしたが、確かに不思議な存在ですよね。。。
現在のインタビューの映像も、美しいロココ調の家具を背景に、目も覚めるような美しい色の衣装、そして耳元や首もとでまばゆく輝く宝石を身に着け、鮮やかな黄色の髪色でアルカイックスマイルを浮かべるその容貌は人なのか神なのか妖精なのか妖怪なのか、美輪明宏を知らない人間にとっては、本当に不思議に映ることでしょう。
しかもその口から語られるのは、三島由紀夫、北野武、宮崎駿といったフランス人にも馴染みのあるアーティストの思い出など。
エンターテインメントだけでなく、他国の“奇妙な”芸術を認める素養を持つフランスの監督ならではの、芸術的なインタビューが展開されます。
<STORY>
1968年の日本映画『黒蜥蜴』で妖艶な美女を演じた美輪明宏。この映画は日本で大ヒットし、海外でも配給された。この映画をきっかけに美輪明宏に興味を持ったフランス人映画監督のパスカル=アレックス・ヴァンサンは、2010年に美輪や彼(彼女)を巡る人びとにインタビューを敢行。『黒蜥蜴』監督の深作欣二、1960年代のアングラ舞台で美輪と共に活躍したアーティストの横尾忠則。そして美輪自身も、作家・三島由紀夫とのエピソードを語る…。
<解説>
このインタビューで語られるのは、美輪明宏の戦いの歴史。
彼は、歌い手として、シンガーソングライターとして、表現者として、同性愛者として、女装者として、常に戦ってきたことがわかります。
デビッド・ボウイやボーイ・ジョージの登場以前から、女装&メイクで舞台に立っていた彼。
歌舞伎以外で初めて男性が“女性として”映画に登場した彼。
労働者のための歌がないことに気付き、「ヨイトマケの唄」を作り、黒い衣装で歌った彼。
芸能界にいながらも、堂々と同性愛者であることを公言した彼。
そのすべてが、彼の戦いの歴史なのです。
だからこそ、彼の交友録は華やかで多彩。
三島由紀夫、横尾忠則、深作欣二、寺山修司、北野武、宮崎駿といった芸術家たちの名前が続々と出てきます。
彼らはみな、美輪明宏の戦友であり、崇拝者でもあるのでしょう。
美輪明宏は、まさに戦後から現代へ、日本の芸能・芸術史を生きて作って来た、アイコンと言うに相応しい存在なのです。
芸能史を戦い、生き抜いた美輪明宏は、現在では“生き神さま”のような存在。
宮崎駿は、彼のそんな本質を、そのまま見抜き、彼をアニメの声優として登場させているのでしょうね。。。
このドキュメンタリー、とても見応えのあるものでした。
惜しむらくは、登場人物が、ほぼみな彼の崇拝者であり、インタビュー内容が彼を讃えるものばかりだったことでしょうか。
例えば、1960年代に美輪明宏を同性愛者として迫害した人物や、その時代を知っている人の証言などがあれば、より深みのあるものになったのではないかと思います。
『美輪明宏ドキュメンタリー~黒蜥蜴を探して~』(63分/フランス/2010年)
原題:Miwa : à la recherche du Lézard Noir
英題:Miwa, A Japanese Icon
公開:2013年8月31日
配給:アップリンク
劇場:東京都写真美術館ホール、渋谷アップリンクにて
監督:パスカル=アレックス・ヴァンサン
出演:美輪明宏/横尾忠則/深作欣二/北野武/宮崎駿
公式HP:http://www.uplink.co.jp/miwa/
キングレコード (2013-12-25T00:00:01Z)
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