【映画レビュー】フライト / Flight
デンゼル・ワシントンのさすがの演技力に思わず舌を巻く映画『フライト』。
冒頭のイッちゃってる演技から、クールで破天荒な名パイロット演技、アル中のへべれけ演技、そして裁判中の神妙な演技…。
第85回アカデミー賞主演男優賞ノミネートも納得の、素晴らしい演技です。
彼の見せる様々な表情と演技こそが、“人間には様々な顔がある”という、この映画のテーマのひとつを物語っている…、というのは、ちょっとうがち過ぎでしょうか。うん、うがち過ぎしょうね。。。
STORY
パイロットのウィトカーは恋人のCA・トリーナとクスリやアルコールを楽しんだ翌日、フロリダ州オーランド発アトランタ行きの旅客機に乗り込む。激しい乱気流で機体は揺れるが、ウィトカーは見事に切り抜け、機体を安定させた。しかし、機体がトラブルを起こし、制御不能に陥ってしまう。機体は急降下する中、ウィトカーは背面飛行を実行し、墜落を防ぎ不時着を成功させた。乗客乗員102人中96人が無事生還し、ウィトカーは英雄となるが…。
解説
本当はアル中でヤク中、でもその持って生まれた才能と経験で天才的なパイロットとなった男、それがこの映画の主人公のウィップ・ウィトカーです。
彼は、世間的には高い評価を得ていますが、その実、弱い人間です。
そんな彼が、背面飛行で96人の人命を救い英雄となった後、世間の評判、そして真実の自分と向き合わなくてはならなくなります。
すべての真実を知っているのは自分だけ。
真実を証明できるのは自分だけ。
そんな状況の中で、彼は自分の弱さを認めることができるのか…。
劇中には、神を象徴するアイテムがいくつも登場します。
「他人を欺くことはできても、自分はすべてを知っている。神は常にそばに在り、すべてを見ている」
他人を欺くことに成功したウィトカーは、自分をも欺き抜くことができるのか…。
と、こういう風に書くと、難しそうな、かしこまった内容なのかと思うかもしれません。
しかしそこはさすがロバート・ゼメキス、ウィトカーの立ち向かう現実を、キッチュだったりポップだったり、どこか奇妙な雰囲気で描いてみせています。
特に、クスリの売人でウィトカーの親友でもあるハーリンを演じるジョン・グッドマンは登場するだけで作品の空気をガラリと変えてしまいます。
彼のシーンが差し挟まれることで、この映画に軽妙さが増していると言えるでしょう。
また、ウィトカーの弁護士であるヒュー・ラングを演じるドン・チードルの苦虫をかみつぶしたような不機嫌な表情も、この作品に深みを与えていると言えるでしょう。
デンゼル・ワシントン、ジョン・グッドマン、ドン・チードル、ブルース・グリーンウッドといった名優たちが顔を揃え、卑小な人間という存在の強さと弱さを描いたこの作品、俳優たちの演技が作品にポップさと深みを与えている、なかなか複雑な味わいの一作です。
別コラム
作品情報
『フライト』(138分/アメリカ/2012年)
原題:Flight
公開:2013年3月1日
配給:パラマウント ピクチャーズ ジャパン
劇場:丸の内ピカデリーほか全国にて
監督:ロバート・ゼメキス
出演:デンゼル・ワシントン/ドン・チードル/ケリー・ライリー/ジョン・グッドマン/ブルース・グリーンウッド/メリッサ・レオ/ブライアン・ジェラティ/タマラ・チュニー/ナディーン・ヴェラスケス/ジェームズ・バッジ・デール/ガルセル・ビュヴァイス
公式HP:http://www.flight-movie.jp/
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