【映画レビュー】17歳の肖像 / An Education
16歳の少女が、ある年上の男性と出会い、恋をしながら大人になって行く姿を描く映画『17歳の肖像』。
17歳まではバージンを守ると決めていた彼女、17歳になって以降は本格的な“大人の恋”に突き進みます。
でも、大人の恋に潜むリスクを見ぬけるほど、17歳はオトナじゃないんだよなぁ。。。
STORY
1961年、ロンドン郊外で暮らす16歳のジェニーは、オックスフォード大学を目指して勉強に励んでいた。ある雨の日、ジェニーは高級車に乗ったデイヴィッドという男性に声をかけられる。チェロが濡れないよう、家まで車で送ってくれたデイヴィッドは、ジェニーを音楽会と食事に誘う。両親の了解のもと、彼と音楽会にでかけたジェニーは、大人の夜の社交場を初めて体験する。そして、ジェニーとデイヴィッドは恋に落ちて行くのだが…。
解説
16歳でデイヴィッドに出会ったジェニー。
洗練されていて、弁舌爽やか、大人の楽しみもいろいろ知っていて、実直な両親や禁欲的な学校の先生たちよりもずっと華やかな世界に生きている男性。
そんな男性が自分を可愛がってくれて、いろいろな世界を見せてくれて、愛してくれるなら、それは恋しないわけにはいかないでしょう。
バージンの友人たちの羨望のまなざしを一身に浴びながら、大人の男性とパリに旅行に行くなんて、楽しくないはずはありません。
そんな風に、夢のような大人の恋に浮かれ、重大な決意をした後に、ジェニーは現実に気付かされます。
“大人の恋”をしているけれど、“少女”のままだったジェニーは、いやおうなくそこで“大人”になるのです。
大人の女性であれば、恋愛には“リスクのある恋愛”もあるということがわかるのでしょうが、そのリスクの存在を17歳にして知らなければならなかったというのは、ちょっとかわいそう。
年相応に学んで行った方がいいこともあるのにね。
この『17歳の肖像』は英国の女性ジャーナリスト、リン・バーバーの実体験をつづった回想録を映画化したものです。
“私は決して彼に質問をしませんでしたが、今思えば、何もあそこまで、とあきれてしまいます。——悪いのはアルベルト・カミュね……私とレディ・エレノア・ホールズ校の学生たちが実践していた実存主義のルールのひとつに、決して質問をしないというのがあったのです。質問をするのは世間知らずとブルジョワ。質問をしないのは教養人とフランス人。私はどうしても教養人になりたかったのです。”
(リン・バーバー/「An Education」(『17歳の肖像』原作)より)
原作の中にあるというこの言葉、とてもよくわかります。
教養人になりたい、という気持ちももちろんあったのでしょうが、年上の彼と対等でありたい、大人の女性として扱われたい、という気持ちもあったのではないでしょうか。
「質問をするのは世間知らずな子ども。質問をしないのは自立した大人の女性」というように。
大人の男性と対等に付き合いたいと思うリン(ジェニー)は何一つ質問をせず、質問されないのをいいことに、ずるい男(デイヴィッド)は彼女に夢を見せ続けたのでしょう。
この作品では、ジェニーの父親をアルフレッド・モリーナが演じているのですが、彼の演技がなかなか素敵でした。
父親は、人の良さとコンプレックスから、娘の恋人にコロリと騙されてしまいます。
娘の幸せを誰よりも願っていたのに、自分が娘を守らなければいけなかったのに、傷ついている娘をただ見守ることしかできないのです。
物語の前半ではガミガミと口やかましかった彼が、何も言わずにただ佇む姿が、どうしようもない無力感を表していました。
この映画の原題は「An Education」。“教育”という意味ですね。
厳しい教育を受けたジェニーは、無二の個性や他者とは違った恋愛観を持つ大人の女性に成長することでしょう。
でも、個性がない方が、幸せになれるってこともあるからなぁ。。。
ただ、原作者のリン・バーバーがイギリスで辛口ジャーナリストとして人気を博しているということを考えると、この教育は、ある意味しっかりと結実しているのかもしれません。
作品情報
『17歳の肖像』(100分/イギリス/2009年)
原題:An Education
公開:2010年4月17日
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
劇場:TOHOシネマズシャンテほか全国にて順次公開
監督:ロネ・シェルフィグ
脚本:ニック・ホーンビィ
出演:キャリー・マリガン/ピーター・サースガード/アルフレッド・モリーナ/ロザムンド・パイク/オリヴィア・ウィリアムズ/ドミニク・クーパー/エマ・トンプソン
公式HP:http://www.17-sai.jp/
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