【映画レビュー】47RONIN / 47 Ronin
日本の年末の風物詩とも言える物語「忠臣蔵」。
47人の侍、赤穂浪士が、主君・浅野内匠頭の仇討ちのため、吉良上野介の家に討ち入りに行くというこのお話を、ハリウッドで映画化したのが本作『47RONIN』です。
キアヌ・リーブスを主演に迎え、大石内蔵助を真田広之が、吉良上野介を浅野忠信が演じています。
正直、忠臣蔵を想像していると、これじゃない感がすごくあるのですが、忠臣蔵を構成する要素を分解して、ハリウッド製作の中世を舞台にした騎士物語のテンプレートに当てはめたと思えば、すごーく納得できます。
まあ、忠臣蔵と思わず、極東にある小さな未開の島国のおかしなヒーロー物語と考えれば、なんとか楽しめるのではないでしょうか。。。
<STORY>
江戸時代のニッポン。どこからともなく播州赤穂に現れた異人の少年・カイは、人びとから蔑まれる中、赤穂の君主・浅野内匠頭とその娘のミカ姫から目をかけられていた。赤穂を併合する野望を持った吉良上野介とその側室の妖術使い・ミヅキの企てで、浅野内匠頭は切腹することに。赤穂を牛耳ろうとする吉良はミカ姫を妻に迎えようと画策する。ミカを愛するカイ、そして赤穂の家臣・大石内蔵助らは、ミカを救うため討ち入りを決意する…。
<解説>
昔々あるところに、周囲の人間とは少し見た目が違う、鬼子と呼ばれる少年がいました。
みんながその鬼子を怖がったり差別したりする中、赤穂国の王様と、彼の娘のミカ姫だけが、鬼子に優しくしてくれました。
成長した鬼子はミカ姫を密かに愛し、ミカ姫も鬼子に心を寄せていたのです。
赤穂国は、日本という世界のトップに立つ王の中の王、徳川の王様からの覚えもよく、ますます発展していきました。
赤穂国の隣国である吉良国の国王は、そんな赤穂国の王様を妬んでいたのです。
吉良国の王様には、妖しい魔術を使う、美しい側室がおりました。
その側室は魔術を用いて赤穂国に災いをもたらし、赤穂国の王様を謀殺してしまいます。
そして吉良国の王様は赤穂国をのっとり、赤穂王の第一の家臣・大石を、1年間地下牢に閉じ込めてしまいます。
大石がいない間に、吉良国の王様は赤穂国を牛耳り、支配下に収めてしまったのでした。
1年後、吉良国の王は、美しく成長したミカ姫を、妃にしようとします。
その報せを知った大内や家臣達は、ミカ姫を救うために立ち上がることを決意します。
そして、出島国に追放されていた鬼子を迎えに行き、鬼子ら47人の騎士と共に、ミカ姫を救うために吉良国へ攻め入るのです…。
あれ、こんな物語、いろんな映画で見たことありますよね?
でもまあ、『47RONIN』はまさにこんな物語です。
ハリウッドの文法では、“主君のために復讐に立ち上がるヒーロー”より、“愛する女性を救うために戦いに向かうナイト”の方が、ヒーローの行動としてふさわしいと見なされるのだと思います。
「コスチュームの英雄ものって言っても、フランスやイギリスのネタは出尽くしてるしな…。あ、なんか日本人には“チューシングラ”っていう人気の昔話があるみたいだな。おお、47人のサムライがセップクするのか! アメージング! やっぱアイツら未来に生きてんな。これを世界で受けるように物語の構成ちょっと変えて、ハリウッドスター主演で映画化するのも、毛色変わって面白いんじゃん?」
というプロデューサーの思いつきが、日本でこれだけ大作扱いされてしまうというのも、なかなかスゴいことです。
物語的には四十七士どこいったよ、という感じですが、ハリウッド映画には、やっぱり世界を背負って立つ主役が必要なのでしょうか。
そしてその主役は、やっぱり日本人である大石内蔵助ではちょっと役不足だ、ということなのですかね。。。
映画『47RONIN』では、日本人の忠臣蔵への萌えポイントである“討ち入り”までの耐え難きを耐え、忍び難きを忍びぬく様子には、まったくというほど重きが置かれていません。
衣装や屋内装飾、公式行事などへの考証はほぼなされておらず、“なんかアジアっぽい”感じで派手に演出されているし。
もののけみたいなものも登場するのですが、『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』の魔女のようなキャラもいたりして、どっちかというと日本よりも中国のイメージの方が影響を与えているような。
そのくせ切腹の様子はリアルにその所作を再現していたりもするので、やっぱりこの映画、“セップク”は絶対に描きたいポイントだったのでしょうねえ。
日本の“セップク”って外国の方には受けるのでしょうか。だったら三島由紀夫の『憂国』くらい派手にやって欲しかった気もするけど。
まあ、この映画を観た外国の人びとが、日本が製作した赤穂浪士の物語を見たら、そのあまりの違いに驚くのでしょうねえ。。。
ロバート・ダウニー Jr.の『シャーロック・ホームズ』を観た時の英国のおじいちゃんたちは、こんな気持ちだったのかもしれないと、ちょっと思ったりもしています。
『47RONIN』(113分/アメリカ/2013年)
原題:47 Ronin
公開:2013年12月6日
配給:東宝東和
劇場:TOHOシネマズ日劇ほか全国にて
監督:カール・リンシュ
脚本:クリス・モーガン/ホセイン・アミニ
出演:キアヌ・リーブス/真田広之/柴咲コウ/浅野忠信/菊地凛子/赤西仁/田中泯/梶岡潤一
公式HP:http://47ronin.jp/
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