【本】サイドウェイズ / レックス・ピケット
結婚を前にした女性にモテるTV俳優&映画監督と、離婚の傷に打ちのめされている売れない作家の1週間のワイン飲んだくれ旅行の様子を描いた小説「サイドウェイズ」を読みました。
この作品、ポール・ジアマッティとトーマス・ヘイデン・チャーチ主演で2004年に映画化もされ(『サイドウェイ』)、さらにそれが2009年に小日向文世、生瀬勝久主演で日本版リメイクも作られた(『サイドウェイズ』)りしたので、覚えていらっしゃる方も多いかもしれません。
実は私は両作とも未見なのですが、だんぜん映画が観たくなりました。
いい年をしたダメ男ふたりが、飲んだくれながら(やっと)大人になろうとするイニシエーションの旅…、なんて楽しそう!
なんと言っても、作中で登場するワインのおいしそうなこと!
作者のワインに対するこだわりや愛が感じられ、本書を読んでいる間、ワインばっかり飲んでいました。。。
STORY
妻とも離婚し、なかなか小説が出版されずに落ち込む作家・マイルスは、結婚を1週間後に控えた友人・ジャックとカリフォルニア、サンタ・イネス・ヴァレーを回るワインテイスティングの旅に出る。ルックスも良いTV俳優で、女性の心をすぐにつかむジャックは、女性と最後のラブ・アフェアを楽しもうとしていた。ワイナリーで出会った美女・テラと仲良くなるジャックをたしなめながらも、マイルスもマヤという美女と仲良くなるが…。
感想
この作品に登場するマイルスとジャックは、二人揃ってかなりのダメ男。
モテ男のジャックは、テレビ俳優兼映画監督で、ルックスも良く、性格も豪放磊落で周囲の人間をひきつける人気者。
が、しかし、結婚して一人の女性と家庭を営んで行く決意がつかず、結婚式を前にしてガールハントに精を出します。
一方のマイルスはと言えば、せっかく書いた小説もなかなか出版されず、出版社と交渉してくれているエージェントからの吉報を待つ日々。
8年間の結婚生活後に離婚した元妻・ヴィクトリアに未練たらたら。
彼女が気鋭の映画監督と再婚したというニュースを聞いて、落ち込んで、鬱々としています。
学生時代からの友人であるジャックとマイルスは、マイルスが脚本、ジャックが主演・監督を担当し、二人で出資して、一緒に映画製作をしたりした仲。
その映画は映画祭ではそこそこ話題になったものの、配給元はつかず、出資した二人は大損…。
実は、このマイルスは作者、レックス・ピケットの分身のようなキャラクターです。
彼は『My Mother Dreams the Satan’s Disciples in New York』という短編映画で2000年度アカデミー賞の最優秀実写短編賞を受賞した人物ですが、90年代にはお金もなく、妻とは離婚し、飲んだくれな日々を送っていたそう。
まさしく、マイルスそのままのキャラクターなのです。
作中でははっきり年齢は明示されていませんが(たぶん)、30~40代であろう男たちが、ワインとセックスを目的のはちゃめちゃな旅を繰り広げ、満身創痍で元の生活に戻っていくこの物語。
この旅を終え、(人よりちょっと遅いかもしれないけれど)彼らはやっと大人になっていくのです。
映画だの、小説だの、そんな夢を追い続けている人間は、大人になるのが人よりだいぶ遅いのかもな…などと、自分や自分の周辺を思い返して、ちょっとしみじみしてしまいました。
「男ってしょうもな…」と思わせつつ、なんだか彼らが愛しくなってくる本書。
ワインの魅力とだめ男の愛らしさが詰まった小説です。
本書を読み終わった後は、確実にワインを飲みたくなるでしょう。
私はついでに、サンタ・イネス・バレーやナパ・バレーにワイン・テイスティング旅行に行きたくなりました。今までアメリカワインに興味なかったのに…。
おいしいピノ・ノワールのワインを飲みつつ、初夏の空気の中で読むのがぴったりのような作品でした。
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