【本】捨て童子・松平忠輝 / 隆慶一郎

捨て童子・松平忠輝(上) (講談社文庫)

隆慶一郎氏の小説「捨て童子・松平忠輝」を読みました。

この小説は、徳川家康の六男に生まれながら、父・家康からは鬼っ子と疎まれ、兄・秀忠からはその異能ぶりを恐れられ20代にして配流の身になった松平忠輝の若き日を描いています。

経歴だけ見ると悲劇の武将に思える松平忠輝ですが、隆慶一郎の手にかかると、人間離れした体術に恵まれ、知識・武芸共に秀でた自由闊達な精神の持ち主である素晴らしい若者として描かれます。

キリシタン禁令を出した二代将軍の弟でありながら、スペイン人と交流し、スペイン語を解し、彼らから西洋医術を学び、キリシタンの精神を理解する譜代大名。
彼の目から見ると、初代将軍・家康、二代将軍・秀忠、そして関ヶ原の合戦で徳川家と闘った豊臣秀頼の姿が、違った魅力を持って見えて来るのです。

<STORY>
天正20年(1592年)、徳川家康の六男として生まれた辰千代。生まれながらに面貌怪異にして体も大きく、鬼っ子として父・家康から疎まれた辰千代は、当時の習慣もあり一度捨てられ、下野の大名・皆川広照によって育てられた。そして慶長7年(1602年)元服して松平上総介忠輝を名乗ることになる。彼はイスパニア人と交流し、医学を学び、スペイン語も自由に操っていた。

鬼っ子として父親からは疎まれた彼だが、その自由闊達な魅力で多くの人を引き付け、雨宮次郎右衛門、その配下の忍び・才兵衛と言った忠実な部下や、傀儡子一族といった味方も多かった。父・家康も忠輝の能力や胆力に気付き、彼を引きたてようとするが、兄・秀忠にはその能力が故に憎まれ畏れられる。秀忠は何度も策を弄し、忠輝を陥れようとするが、そのたびに忠輝は見事に秀忠の裏をかいてみせた。

しかし、忠輝の好むと好まざるとに関わらず、家康の六男という生まれにより、大久保長安の陰謀や、関ヶ原の合戦と言った歴史の流れに巻き込まれていく…。

<感想>
物語を通して描かれているのは、身分の低い母親から鬼っ子として生まれたが故に持つことが出来た、忠輝の何物にも縛られない自由な精神です。
もちろん、将軍の息子と言うだけでアドバンテージはあるものの、その分、嫉妬や陰謀と言ったものにも巻き込まれやすいのですが、彼の自由な精神は、その陰謀をまっすぐに打ち砕いたり、彼の精神に共鳴した部下たちによって守られたりもします。

彼の放つ自由な光は、人を引きつけます。
しかし、その光がまばゆい分、人の心の大きな闇を植え付けます。

その深い闇にとらわれたのは、兄・秀忠。
自分がいくさが下手で、父親から低く見られているのを知っているからこそ、父や弟・忠輝に卑劣な罠を何度も仕掛けて行きます。

忠輝が魅力的である分、秀忠のその卑劣さが際立つストーリーになっています。

歴史の上では、秀忠が二代将軍となり、忠輝は信濃国・諏訪藩に配流となり、92歳で亡くなるまで幽閉されて過ごします。

史実だけ見ると、秀忠は運命に恵まれた将軍で、忠輝は悲劇の武将というイメージですが、隆慶一郎氏が描くとここまで印象が変わって来るのが不思議です。
異能の人・忠輝と、その異能の弟をおそれる凡才・秀忠という構図になるのです。

本当の忠輝がどういう人だったのかは、今となっては知る由もありませんが、はるか昔に、こんな自由な精神を持ち、まっすぐに生きた男性がいたのかと思うと、それだけでなんだか夢が膨らみます。

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